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6月22日 進化促進計画

 新たな世界の中で「V」たちはたくましく生きていた。
 どんな環境に投げ込まれても、どんな敵と相対しても「無敵因子」はすぐにその急所を見抜き、勝利してしまう。そればかりかその戦いの中で学習し、窮地に追い込むたびに進化と成長をくり返してゆくのだ。ほんの二十三時間で「V」の力は数倍、数十倍に膨れ上がっていた。俺の用意したハードルはほとんどすべてクリアーしているといっていいだろう。
 しかし、一つだけ気になるところがあった。「V」の行動にはどうも積極性に欠ける嫌いがあるのだ。とくに環境にしがみつこうとする性質だけはいただけない。
 それだけの力があるというのに外に目を向けず、自らが改良した環境の中で必要最小限の成長を遂げて満足しているというのはどういうことなのか? 俺の考案した「無敵因子」は、なにが得でなにが損なのかを「V」に教えているはずなのに……。
 結局、敵に合わせて力が増幅しただけで、定常状態を望もうとするその基本的な性質は以前となにも変わっていないのだ。あるいは、これが「無敵因子」の限界なのだろうか? もし、後押ししてやらなければ生きてゆけないというのであれば「無敵」を名乗る資格などないのだが……。

 俺はちょっとした実験をすることにした。これまでの経緯で「V」が望む群生濃度というものは把握できているのだが、それを超えるだけの個体数を入植させてみようと思ったのだ。
 個体数の増加はなにを生むだろう? 外の世界へ目を向けるきっかけとなるか、集団自殺の原因となるか、それは俺にもわからない。だが、いままでにない環境の変化が、新たな方向への成長と進化を「V」にもたらすという可能性は大いにありうる。俺は活動中の「V」のデータを回収し、解析した。死体から複製を造る方がより精度の高い解析ができるのだが、実験を止める時間が惜しい。それにコンピュータの処理能力の違いを考えれば、前のIWよりもはるかに高度な解析ができるはずだ。
 俺は大量の複製を作成し、一挙に群生濃度を五割増しにしてやった。これで、もし、なんの変化も見せないというなら「V」は食料危機で絶滅することだろう。
 生き残るためには新たな変化が必要なのだ。その「変化」が、俺を満足させるだけのものであればよいのだが……。

>>>6月24日