6月4日 IWダイブ

 余暇を費やす楽しみとしては、やはりIWダイブに優るものはない。
 あらゆる情報と物資が管理されているネットワーク世界の中で、ただ一つ予測不可能なInner World。そこには生きのびるための戦いがあり、弱肉強食の生存競争があり、資源浪費の極致ともいうべき戦争すらシミュレートされている。
 古き良き大量消費時代の再現だ。地球に資源があり、ネットワークに管理されていない人間たちが好き勝手に振る舞っていた時代。これは、いまの世界に残された最後の「未知」なのかもしれない。
 ただ観察しているだけで退屈しない者もいるというが、それは俺の性分ではない。センターにIDを発行してもらい、昼前に「卵」を手に入れた。たしか、これは俺が養う八個目の卵になるはずだ。
 今度はどんな因子を組みこもう? これまでは会社の方が忙しくてあまりかまってもやれなかったが、今回は腰をすえて取り組める。俺の知力の限りをつくして最強のCreatureを……、もっとも優れた生物を作りだしてやろう。
 俺は興奮しているのだろうか? おそらく、人口抑制されていなかったころ、子育ての楽しみというのはこんな風だったのだろうな。どんな優れた生物を育てたところでなにかが得られるわけでもない。ただ、あるのはただ楽しみと名誉だけだというのに……。
 だが、だからこそ、このゲームは面白い。

>>>6月7日