6月18日 Inner World

 たったの四日で、「V」はIW有数の強大な生命体となった。「個体としての強さ」は三つのエリアで明らかになっていたが、群生してからの強さはそれをはるかに上回るものがあったのである。
 「V」は常に集団で行動する。その団結力と敵を見つけ出すセンスには驚嘆するほかない。「無敵因子」を組み込まれたCreatureは「なにが得か」ということを理解して行動するのだ。個体能力でははるかに勝る敵を相手にしても数の力でそれを圧倒し、ほとんど犠牲者を出すことなく獲物を手に入れていった。そればかりか環境そのものに対しても、その力は存分に発揮されていたのである。
 自ら選択した「良質のエネルギーが得られる住みやすい区画」をさらに快適になるよう改造していると知ったときには、さすがに俺も驚いた。「環境適応能力」どころではない。「無敵因子」は環境にすら勝利してしまうのだ。IWの一角に現れた「V」の王国は炎のような侵略を続け、その領土を徐々に広げていった。

 やはり俺の考えは間違っていなかった。「V」の勝利は「無敵因子」の勝利であり、俺の勝利でもある。
 そして、その「V」はすでにして無敵だった……。

>>>6月19日