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6月1日 解雇通知

 朝起きてメールボックスを覗くと、解雇通知が届いていた。まさかと思う気持ちもないではないが、はっきりいってせいせいした。
 新しいゲーム理論を開拓した数学の天才を欲しがっていたのは誰だ? その名誉と成果とをわけ与えていてやっていたというのに、用がなくなればお払い箱。しかも、その仕打ちの代価ともいうべき退職金がたった十五年分の給与とは、あきれてなにもいう気になれない。
 会社との接続はまだ途絶えてないようだ。ゲスト扱いになり下がったのは少々気に入らないが、別に未練があるわけでもない。俺の足を引っ張る同僚や、俺の才能に嫉妬する上司の中で息苦しい思いをするのはもうまっぴらだ。
 待てよ……。せっかく接続できるんだ、俺を縛りつけていた7年間の腹いせに、ウイルス・コロニーを送り込むことも……。
 いや、やめよう。そんなスマートでない手段は俺の美学に反するし、なにより、あのNatureを敵に回したくはない。The Nature……、自己復元能力を持つ報復型防衛壁。俺ならばアイスブレイクも不可能とはいわんが、万一の時の報復処置が恐ろしい。パーソナルデータをネットワークに公開されるとあっては……な。
 なにより、あれは俺の子供にも等しい最高傑作だ。この手で汚したくはない。
 もう、社の事を考えるのはよそう。

>>>6月4日